村上春樹の『意味がなければスイングはない』を読んだ。
あらかじめ書いておくけれど僕は30年近く前からの村上主義者であって、彼の本には随分助けられてきたし、精神的に影響も受けてきた。彼の著作があったおかげで僕の人生は少しだけ楽になったのは事実だ。感謝しかない。そんな僕が書くんだけれど。
この本は全然ダメ。(あっさり)
というか、村上春樹が音楽について書いたエッセイは基本的に全てダメ。あれはファンタジー。音楽評ではない(断言)
この人のロックとジャズの好みは「コテコテ&ベッタベタやないかい」世界から一歩も出ていない。キース・ジャレットを「胡散臭い」、チック・コリアを「退屈だ」と一蹴してる時点で完全に化けの皮が剥がれてる。ちょっとでもスイング・初期ビバップから離れると理解できないらしい。シダー・ウォルトンをやたら推してるのも(そりゃ悪くないピアニストだとは思うが)むべなるかな。ウィントン・マルサリスに対する態度なんかヒドイもんでね。ま、僕もマルサリスは強いて聴かないけどね。
ジャズについて書くのはいいとして、悪口を書いちゃダメだろう。キースですらウィントンを批判する権利はないと思う。マイルズにはあったかもしれない。でも、マイルズはウィントンを気に掛けていたらしい。(by 小川隆夫)
逆に、悪口さえ書かなきゃ結構好き勝手書いていいんだな。ということを、僕は村上春樹のエッセイから学んでしまったのである。
ということで僕なりにアドリブについて考えてみたことを書く。
ピアニストを念頭に書いてるけど、どの楽器でも当てはまると思う。
アドリブにはざっと4種類ある。
1.1小節前 〜 直前に思い付いたフレーズ。奏者は頭真っ白状態である。
2.2、3小節前に思い付いたフレーズ。奏者には結構余裕がある。
3.そのコーラスが始まってから思い付いたフレーズ。いわゆるストックフレーズがほとんどだ。
4.アドリブが始まる前に決めているフレーズ。これも当然ストックフレーズ。
4になると「そもそもそれをアドリブと言えるのか?」と言いたくなるかもしれないけれど、わりと名盤・名演にもタイプ4は多い(はずだ)。すぐ思いつくのはMilesのRound Midnight は Bye Bye Blackbird、レッド・ガーランドのソロの2コーラス目。
これ、完全に仕込みである。五千円賭けてもいい。
仕込みだからイカン、という訳でもない。もちろん。仕込み感を感じさせずにさらっと出すのも芸のうち。
あるいはBill Evans。
この人の全盛期の曲は(もちろん曲にもよるけれど)、ワンコーラス目はかなり仕込んで完成度高く、ツーコーラス目はある程度を仕込みつつわりと自由に、スリーコーラス目ははっちゃけて。というパターンが多いと思う。全体的に「神ってる」感を醸してるのがすごい。
僕の感覚では「1」でちゃんと勝負になってるのがキース。次点、ビル・エヴァンス、ハービー、ブラッド・メルドー。バド・パウェルは惜しいなあ、なんか違うんだよな。
「1」「2」で勝負してる準A級、Bの上級が多い。
「2」「3」でもスゴイのが、モンクだ。
この区分ではジャズ・ミュージシャンの格付けをすることは難しいけれど、気合いが入った曲かどうかは分かると思う。
力尽きたのでおしまい。
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