2018年5月16日水曜日

ジャズ評論家もつらいよ(多分)


「ビル・エヴァンスのピアノはリリシズム(叙情的)だ」なんて評論を書く人がいたら、その人はビル・エヴァンスをまともに聴いたことのない人であります。氷を鋭利な刃物で削っていくようなビル・エヴァンスのアドリブの、どこが叙情的か。My Foolish HeartとWaltz For Debbyしか聴いたことないんじゃないの?

テンションが強いコンピング(「4度重ね」「クラスタ」「ルートレス」)と、放り出すようなアブストラクトなアドリブフレーズからは、リリシズムなぞほとんど感じない。むしろ調性を破壊する一歩手前まで進んだ前衛的サウンドだよね。時代を画すイノベーターであって、キース、ハービー、マッコイ、チック諸々に多大な影響を与えた偉大なピアニストだ。下手ながらもジャズピアノやってるとビル・エヴァンスの凄さが具体的に分かるってこと。(ドヤァ

とか自慢してるわけじゃなくて、ジャズ評論家の人も大変だなあ、ということを思うわけです。

最近いわゆる「名盤」(括弧付き)を集中的に聴いてるけれど、ピンとくるものは本当に少ない。聴いて三十秒もすると別のこと考えてたりしてね。「いいなあ」と思えるのは10枚に一枚あるかどうかじゃないかな。

ジャズ評論家の人も、多分「うーん、聴いてもあんまりピンと来ないなあ」なんて思いながら頑張って評論書いてるんでしょう。文句言っちゃいけない。

中学生の頃は、小遣いを貯めてジャズのレコードを買って聴いてた。今は図書館からCDを借りてMP3に落としたり、Spotifyで検索して聴いたりしてる。本当に楽だし、効率的にどんどん聴けてしまう。その辺りの便利さの違いが(加齢は別として)感激の大小に影響してるのかな、とか思ったりもしたけれど、そこはもう考えても仕方ないよね。

あの黒くて高価で(安くはない)ずっしりした円盤を所有する喜びは、確かに音楽を聴く楽しみの一部だったよな。とか思い出しながら、Macのスピーカから流れるMP3を聴くのも、それはそれで乙なものかもしれないね。ターンテーブルに円盤を乗せて、針を落としたつもりで聞いてみようか。

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